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川崎大師へのツーリングと不思議な再会 〜あの男との奇妙な縁〜

第一章 はじまりはいつもエンジンをかけるところから

秩父でのツーリングから数日後、俺は相棒のハーレーとともに川崎大師へ向かっていた。
新年ではないが、なんとなく寺の空気を感じたくなった。

「今日はどこへ行く?」
「川崎大師だ。」
「ほぉ…また渋い場所を選んだな。」
「たまにはこういう場所もいいだろ?」

エンジンをかけ、都内を抜けて川崎へ。
いつものワインディングとは違う、都会の道を流すのも悪くない。


寺の境内と、不思議な再会

川崎大師の駐車場にバイクを停め、参道を歩く。
境内に足を踏み入れると、線香の香りと静寂が包み込む。
バイクで駆け抜ける時間とは違う、落ち着いた時間がそこにはあった。

「おい、たまには俺もお参りしたいぜ。」
「バイクは参拝できないだろ。」
「チッ、まぁいいか。俺はここで待ってるぜ。」

そう言って、相棒は静かにエンジンを休ませた。

手を合わせ、心を落ち着かせていると、ふと誰かの視線を感じる。
振り向くと――そこに見覚えのある白髪混じりの男がいた。

「あんたは…!」

間違いない。
秩父の長瀞で出会った、あの男だ。

「よぉ、また会ったな。」

男はニヤリと笑う。
あまりにも偶然すぎる。

「…あんた、もしかして俺を追ってきたのか?」
「はっはっは、俺がそんな暇な男に見えるか?」

冗談めかした口調だが、どうにも気になる。
バイクで日本中を旅している俺が、まったく違う場所で同じ人物に出会う確率がどれほどあるだろうか。


語られる過去

「なぁ、コーヒーでも飲みながら話さねぇか?」

男に誘われ、境内近くの茶屋に入る。
俺たちはそれぞれ湯呑みを手に取り、しばし沈黙が続いた。

「なぁ、お前のハーレー、まだしゃべってるか?」

男の問いに、俺は湯呑みを置いた。

「…やっぱり、聞こえてたんですね。」
「まぁな。昔、俺もそんな相棒と旅をしてたからな。」

「……昔?」

「俺も若い頃はバイクで日本中を旅してた。そいつはただのバイクじゃなくて、俺と会話する相棒だった。」

男の語る話は、俺の経験とまるで重なっていた。
言葉を交わし、時に口うるさく、時に頼れる相棒。

「でもな、ある日ふと気づいたんだ。」
「何を?」

男は湯呑みを持ち上げ、少しだけ口をつけた。

「バイクがしゃべってるんじゃねぇんだよ。俺がバイクと話してたんだ。

その言葉に、俺は一瞬、言葉を失った。

「……どういうことです?」

「人間ってのは、孤独を埋めるためにいろんなものと対話する。
特に、一人旅が長くなればなるほど、バイクがまるで生きているように感じてくるもんだ。」

「それじゃあ、俺のハーレーが話してるのも、ただの…?」

「さぁな。それはお前が決めることだ。」

男はまたニヤリと笑った。

「ただ一つ言えるのは――相棒がいる限り、お前はひとりじゃないってことだ。


別れと、再び走る

男と別れ、俺はバイクへ戻る。

「おい、あのオヤジ、何を話してたんだ?」
「…お前が本当にしゃべってるのか、それとも俺が勝手にそう思ってるだけなのか、って話だ。」
「ハッ、難しく考えすぎだぜ。」

相棒はエンジンを鳴らし、まるで笑っているようだった。

「俺は俺だし、お前はお前だ。それでいいだろ?」
「……そうだな。」

エンジンをかけ、再び道へ。
目の前に広がるのは、どこまでも続くアスファルト。

あの男は一体何者だったのか。
過去に俺と同じような旅をしていたのは本当なのか。

考えれば考えるほど、謎は深まる。

でも、一つだけ分かっていることがある。

俺はまだ、走り続けるってことだ。

「さあ、次はどこへ行く?」
「お前が決めろよ。」

相棒のハーレーとともに、俺はまたアクセルをひねる。

風が吹く限り、俺たちの旅は終わらない。

第一章 完

著者プロフィール

ようこそ、俺と相棒の奇妙な旅へ
エンジンをかければ、旅が始まる。
でも、俺の相棒はただのハーレーじゃない。
しゃべる。しかも、めちゃくちゃよくしゃべる。

「今日はどこへ行く?」
「その前に、俺のオイル交換はどうなった?」
「お前、また無計画に走ろうとしてるだろ?」

…うるさいけど、憎めない。
こいつと旅をしていると、ただの道も、ただの景色も、いつもとは違って見える。
自由気ままな俺と、口うるさいハーレーの奇妙な旅。
絶景、古き良き町並み、気まぐれな寄り道、そして時々起こるちょっと不思議な出来事。

📍 目的地はなし。行きたい場所に行くだけ。
🏍 二人(?)で風を切る。
🎭 笑えて、考えさせられる、そんな旅の記録。

「さあ、今日はどこへ行く?」
「お前がちゃんと計画を立ててるならな。」

さて、どうなることやら。

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第一章 はじまりはいつもエンジンをかけるところから
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