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定峰峠(さだみねとうげ)ツーリング – 1489mの絶景を駆け抜けて

第五章 鉄の馬と金の翼

標高1489メートルの峠道——定峰峠。ここは埼玉県秩父エリアにあるライダーたちの隠れた名所だ。ワインディングが続くこの峠は、走る楽しさだけでなく、頂上に広がる壮大な景色が待っている。

「あなたが去った後も、私はあなたの思い出と共に生きていく。」
 — アルフレッド・テニスン


朝霧に包まれた峠道

エンジンをかけ、スポーツグライドを走らせる。ゆるやかに続くワインディングロードの先、朝靄に包まれた峠の頂が見えてきた。路面は適度に整備されているが、油断すると足元をすくわれるようなカーブが続く。特に早朝や雨上がりは、タイヤのグリップに気を配りながら慎重に進む。

峠に近づくにつれ、木々の隙間から光が差し込み、緑が輝き始める。この瞬間がたまらない。エンジンの鼓動とともに、峠へと駆け上がる高揚感を感じる。


静寂の中のエンジンサウンド

定峰峠の魅力は、その静けさにある。週末にはライダーが集うものの、平日はほぼ貸切状態。耳を澄ませば、木々の間を吹き抜ける風の音と、自分のバイクのエンジン音だけが響く。スポーツグライドの低く唸るVツインの鼓動が、峠の空気を震わせる。

峠道を駆け上がる最中、ふと視界に映る赤いホンダ・ゴールドウィング。リサだ。先行して走っていた彼女のバイクが、峠の頂で俺を待っている。

「遅かったじゃない?」
「いやいや、お前が飛ばしすぎなんだよ。」

二台のバイクが並ぶ。ゴールドウィングのエンジンが優雅に響き、スポーツグライドがそれに応えるように軽くアクセルを煽る。


峠の頂で一息 – パラグライダーが舞う天空の展望台

峠を越えた先にある展望台に向かう。ここはパラグライダーの発着場でもあり、運が良ければ空を舞うグライダーが見られる。風を感じながら、彼らが大空へと飛び立つ姿を眺めるのは、まるで別世界にいるかのような気分だ。

展望台からは、秩父の山々や街並みが一望できる。遠くには奥秩父の峰々が連なり、その向こうには関東平野が広がっている。

「すごい景色ね。」
「バイクも空を飛べたらいいのにな。」

そんな他愛もない会話をしながら、風を感じる。ライダーにとって、この瞬間が何よりの贅沢だ。


夜の峠 – 星降る絶景

夜になると、定峰峠の展望台は一変する。街の喧騒を離れたこの場所は、まさに星の楽園。余計な光が少ないため、空には無数の星が輝き、まるで手を伸ばせば届きそうなほどだ。

「これが本当のプラネタリウムか……」

空を見上げながら、ふと思う。この道を駆け抜ける度に、俺たちは新しい景色に出会い、またどこかへ向かうのだろう。
リサの方を振り返ると彼女の背中には天使の羽が生えているように見えて、満点の星空に今にも飛んで行ってしまいそうだった。どこかその後ろ姿は孤独を感じて寂しそうにも見えた。

スポーツグライドとゴールドウィングのエンジンが、静かに共鳴する。

「そろそろ行かなくちゃ。」
「また会えるか?」
「もちろんよ。」

ゴールドウィングは優雅にエンジンを鳴らし、ゆっくりと定峰峠の展望台を後にした。

スポーツグライドは、その後ろ姿を見送りながら、静かに呟いた。

「どうか、リサが長く走り続けられますように——。」


走り抜ける峠の余韻

峠を抜けると、視界が一気に開ける。緑の木々、遠くに広がる秩父の街並み。下りのワインディングをリズムよく駆け抜けながら、俺は静かに願った。

「この道が、ずっと続けばいいのに。」

定峰峠——ライダーのためにあるような、静かで美しい峠道。またいつか、ここに帰ってこよう。

著者プロフィール

ようこそ、俺と相棒の奇妙な旅へ
エンジンをかければ、旅が始まる。
でも、俺の相棒はただのハーレーじゃない。
しゃべる。しかも、めちゃくちゃよくしゃべる。

「今日はどこへ行く?」
「その前に、俺のオイル交換はどうなった?」
「お前、また無計画に走ろうとしてるだろ?」

…うるさいけど、憎めない。
こいつと旅をしていると、ただの道も、ただの景色も、いつもとは違って見える。
自由気ままな俺と、口うるさいハーレーの奇妙な旅。
絶景、古き良き町並み、気まぐれな寄り道、そして時々起こるちょっと不思議な出来事。

📍 目的地はなし。行きたい場所に行くだけ。
🏍 二人(?)で風を切る。
🎭 笑えて、考えさせられる、そんな旅の記録。

「さあ、今日はどこへ行く?」
「お前がちゃんと計画を立ててるならな。」

さて、どうなることやら。

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第五章 鉄の馬と金の翼
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