
「旅とは、未知の世界への扉を開くことだ。」— アンドレ・ジッド

今日の目的地は 横浜ベイブリッジ。
相棒のスポーツグライドとともに、海風を感じながら走るには最高のルートだ。
首都高速湾岸線を抜け、目の前に現れる巨大な吊り橋。
全長860メートルの横浜ベイブリッジは、横浜の象徴ともいえる存在。
眼下には横浜港、遠くにはみなとみらいの高層ビル群が広がる。
夕方になればライトアップされ、幻想的な風景へと変貌する。
「ここからの景色は、何度見ても飽きねぇな。」
俺が呟くと、スポーツグライドが軽くエンジンを鳴らした。
そんなとき、背後から 低く響くエンジン音。
振り返ると、赤いホンダ・ゴールドウィング が静かに近づいてくる。
— あのヴェルニー公園で出会ったボーイッシュな女性ライダーだ。
ヘルメット越しに目が合う。
やはり、彼女は言葉を発さない。
しかし、次の瞬間——
「お兄さん、いい匂い。」
突然、彼女の 腕が俺の背中に回される。
柔らかく、それでいてしっかりとした感触。
豊満な胸が背中に押し当てられ、ヘルメット越しに彼女の息遣いが伝わる。

「ちょっ…おい?」
俺が動揺していると、彼女は 何も言わずに軽く抱きしめた後、スッと腕を解く。
そして、無言のまま再びバイクに跨り、ゴールドウィングのエンジンを鳴らす。
「なんだったんだ、今のは…」
「お前、照れてんのか?」
スポーツグライドが楽しそうにエンジンを揺らす。
彼女は俺を一瞥すると、ゴールドウィングの巨体を滑らせるように橋を駆け抜けていった。
その後ろ姿を見送りながら、俺は心の中で呟く。
—また、どこかで会う気がするな。
横浜の街を巡る

橋を渡り、大黒ふ頭にある 「横浜ベイブリッジスカイウォーク」 へ向かう。
高さ約60メートルの展望台からは、横浜港やみなとみらいが一望できる。
「こりゃ絶景だな…」
潮風を感じながら、横浜の景色をじっくりと堪能する。
次に向かったのは 「山下公園」。
港町の雰囲気が漂い、散策するだけでも心が落ち着く。
公園のベンチに座り、遠くに見える横浜ベイブリッジを眺める。
「さっきの彼女も、今どこかを走ってるのかね。」
「お前、気にしてんじゃねぇか。」
相棒のスポーツグライドがクスクス笑うようにエンジンを揺らす。
旅の締めくくり—横浜中華街とポートマーケット

腹が減ったので、「横浜中華街」 へ向かう。
ここは日本最大の中華街で、約250もの店が軒を連ねるグルメの宝庫。
迷わず 小籠包 を注文。
熱々のスープが口の中に広がり、思わず笑みがこぼれる。
デザートには、名物の ゴマ団子 を頬張る。
甘さ控えめで、ゴマの香ばしさが絶妙だ。
「やっぱり旅の締めは、美味い飯に限るな。」
「お前、完全に食い倒れツーリングになってるぞ。」
最後に 「よこすかポートマーケット」 へ立ち寄る。
市場には新鮮な海産物が並び、活気に満ちている。
「横須賀海軍カレー」 をお土産に購入。
この香りを嗅ぐたびに、今日の旅を思い出すことになるだろう。

エンジンを鳴らし、次の旅へ
日も暮れ始め、そろそろ帰路につく。
今日一日、横浜の街を走り、出会い、そして再会した。
「さあ、次はどこへ行こうか?」
エンジンをかけると、スポーツグライドが低く唸る。
まるで、次の冒険を期待しているかのように——。
