
「人生とは旅であり、旅とは人生である。」— ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
「今日の目的地は?」
エンジンをかけると、相棒のスポーツグライドが低く唸る。
「横須賀の 三笠公園 だ。歴史の息吹を感じながら、海風に吹かれるってのはどうだ?」
「いいぜ。鉄の巨人に挨拶しに行くか。」
こいつは俺のバイク、ハーレー・スポーツグライド。
ただのマシンじゃない。時に相棒であり、時に旅の語り手だ。
陽気なエンジン音を響かせながら、横須賀へと向かう——。
三笠公園—鉄の巨人との出会い

「おい、見ろよ。あれが噂の戦艦三笠か。」
スポーツグライドが驚いたようにエンジンを鳴らす。
目の前にそびえ立つ 記念艦「三笠」 は、まるで時を超えて戦場から帰ってきたような存在感を放っている。
鋼鉄の船体に手を当てると、そこにはかつての戦いの記憶が刻まれているようだった。
「こいつも、お前と同じく歴史を背負った鉄の塊だな。」
「まぁな。けど、俺はまだ現役だぜ?」
確かに、こいつはまだまだ走り続けるつもりらしい。
そんな会話をしながら、公園内を散策した。
異国情緒漂う「どぶ板通り」

「腹減ったな。」
スポーツグライドがタイヤを小刻みに揺らす。
「よし、どぶ板通り で飯にするか。アメリカンなバーガーでも食うか?」
「悪くねぇな。肉と旅は相性抜群だしな。」
どぶ板通りは異国の空気が漂う場所。
米軍基地の影響もあり、英語の看板が並ぶ中、俺は名物の 「横須賀ネイビーバーガー」 にかぶりついた。
「この肉の厚み…これぞライダー飯だ!」
「食ってるお前が、一番アメリカンな存在になってるぜ。」
バーガーを平らげ、次の目的地へ向かう。
ヴェルニー公園で出会ったボーイッシュなライダー

食後は ヴェルニー公園 でコーヒーブレイク。
軍艦とバラが織りなす風景を眺めていると、一台の ホンダ・ゴールドウィング が横に停まった。
ふと視線を向けると、ライダーは 20代前半のボーイッシュな女性。
ショートカットの髪が風に揺れ、引き締まった体つきがレザー越しにわかる。
しかし、ジャケットのジッパーの隙間から覗くラインは、意外にも豊満だった。
俺は軽く視線を向け、彼女も一瞬だけこちらを見る。
だが、それだけ。会話もなく、余計な仕草もない。ただ、旅人同士の目が交差しただけだった。
彼女は無言でコーヒーを一口飲み、ゴールドウィングのエンジンを静かに鳴らした。
それだけで、彼女がこれまでどれだけの道を走ってきたのかがわかる気がした。
次の瞬間、彼女は俺を一瞥すると、ゆっくりとバイクを走らせていった。
残されたのは、ゴールドウィングの低いエンジン音と、ほのかに漂うコーヒーの香り。
「おい、気になるか?」
スポーツグライドが軽く唸る。
「いや…ただ、かっこいいライダーだったな。」
「ふぅん。」
俺はそれ以上何も言わず、コーヒーを飲み干した。
旅の締めくくり—よこすかポートマーケット

「さて、そろそろ帰るか。」
「その前に よこすかポートマーケット で土産を買おうぜ。」
「また食い物かよ?」
「旅の思い出は、味とともに持ち帰るのが俺の流儀だ。」
市場には新鮮な海産物が並び、俺は「横須賀海軍カレー」を手に入れた。
この香りを嗅ぐたびに、今日の旅を思い出すことになるだろう。
エンジンを鳴らし、次の旅へ
「さて、次はどこに行く?」
俺がヘルメットを被りながら尋ねると、スポーツグライドが答えた。
「さっきの彼女、南へ向かうって言ってたな?」
「……ああ、いつかは俺も行くさ。」
「だったら、行き先はもう決まってるようなもんだな。」
エンジンをかけると、スポーツグライドが嬉しそうに唸った。
「まずは今日の道を楽しもうぜ。」
「おう。じゃあ、走り出すか!」
アクセルをひねり、横須賀の海風とともに新たな旅へと進む。
旅はまだ終わらない——むしろ、これからが本番だ。