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城ヶ島ツーリング「運命の風が吹くとき—パワースポット—城ヶ島の出会い」

第五章 鉄の馬と金の翼

「運命の人とは、出会うべくして出会う。」 — ヴィクトル・ユーゴー


快晴の青空の下、ハーレー・スポーツグライドのエンジンを鳴らしながら、俺は城ヶ島へ向かっていた。
三浦半島の最南端に位置するこの島は、美しい海岸線と歴史を感じさせる神社や灯台が点在する、バイク乗りにとって魅力的な場所だ。

横浜から国道134号線を南下し、海沿いの景色を楽しみながら進む。
城ヶ島大橋を渡ると、一気に空と海が近づいてくる感覚に包まれた。

「よし、まずは小桜姫神社へ行ってみるか。」


小桜姫神社での運命の再会

城ヶ島の奥にひっそりと佇む 「小桜姫神社」
この地に伝わる伝説の姫を祀る小さな神社だが、神秘的な雰囲気が漂っている。

俺はバイクを降り、城ヶ島の遊歩道を渡り神社へ向かった。

「……ん?」

ふと、視線の先に見覚えのあるシルエットがあった。

赤いホンダ・ゴールドウィング。ショートカットの髪。黒いレザージャケット。

間違いない。

ヴェルニー公園、横浜ベイブリッジ、昇仙峡——
旅の中で何度も交差した 彼女 だった。

彼女は神社の前に立ち、静かに手を合わせていた。
その姿は、いつもの無口でクールな印象とは異なり、どこか神聖で穏やかに見えた。

「へえ、お前もここに来てたのか。」

俺が声をかけると、彼女はゆっくりと振り向いた。
その瞬間——

彼女の目が大きく見開かれた。


「これって…運命、かな…?」

「……。」

彼女は、驚いたように俺を見つめたまま、しばし沈黙していた。

いつものクールな表情ではなく、どこか 頬が赤くなっている 気がする。

「どうした? 何か変なもんでもついてるか?」

俺が冗談めかして言うと、彼女は少し戸惑ったように視線をそらし、ポツリと呟いた。

「……また、会った。」

「ああ、そうだな。」

「こんなに何度も会うのって……運命、かな…?」

俺は少し驚いた。
いつもは無口でクールな彼女が、そんなことを言うなんて。

「さあな。けど、こうしてまた会ったのは事実だ。」

そう言うと、彼女は小さく笑った。
そして、ふいに俺のすぐそばに歩み寄ると——

俺のジャケットの裾を、そっと握った。

「……ねえ。」

「ん?」

「もう、逃がさないから。」

その言葉に、一瞬ドキッとする。

—— これは、本当に運命なのかもしれない。


急接近これも恋のパワースポットの力か

彼女は俺のすぐそばに立つと、ふわりと 俺の背中に頬を押し付けてきた。

「……おい。」

「お兄さんの匂い、やっぱり好き。」

クールな彼女が、まるで恋する少女のように甘えてくる。

「まったく、お前キャラ変わってねえか?」

俺が困惑しながら言うと、彼女は くすっと笑って俺の腕にしがみついた。

「もう知らない。これ、運命だから。」

まさか、城ヶ島でこんな展開になるとは——
この旅、思った以上に面白くなりそうだ。


小桜姫神社での思わぬ再会の後、俺たちは城ヶ島のあちこちを巡っていた。
彼女——赤いホンダ・ゴールドウィングに乗るボーイッシュなライダーは、さっきまでのクールな態度とは打って変わって、妙に俺の近くを離れない。

「どこ行く?」
「城ヶ島灯台でも行ってみるか。」
「うん。」

彼女は短く返事をして、俺の隣を走り出す。
城ヶ島の海風が心地よく、青く広がる空が旅の気分を高めてくれる。


城ヶ島灯台、そして海の向こうに思いを馳せる

城ヶ島灯台は、日本で5番目に点灯した歴史のある灯台だ。
関東大震災で倒壊したものの、再建され、今もこの海を見守っている。

俺たちは灯台の周りを歩きながら、しばし無言で海を眺めていた。

「……海の向こう、行ったことある?」
不意に彼女が問いかける。

「いや、日本のツーリングばかりだな。」
「そっか……。」

その時、ふと DUCATIの彼女 のことが頭をよぎった。
世界一周の旅に出たあの子は、今どこを走っているのだろうか。
同じ空の下、彼女もまたバイクを走らせているのだろうか——。

「……誰のこと考えてるの?」

「え?」

不機嫌そうな声がして、顔を上げると、彼女が じとっとした目 で俺を睨んでいた。

「いや、別に……。」
「嘘。」

彼女は腕を組み、ぷいっと横を向いた。

「さっきから、急に静かになった。なに? どっかの女?」

「……。」

図星だった。

「ふーん。ふぅーん? どんな女?」

「ちょ、待て、お前なんでそんな探るんだよ。」

「別に?」

彼女は俺の袖を掴んで軽く引っ張る。

「……ねえ、その子より私の方が可愛い?」
そう言って胸元の襟を緊張したようにいじり始めた。

「えぇ……?」

「どっちがいい?」

「いやいや、比べるもんじゃないだろ。」

「ふーん……。」

彼女は拗ねたように唇を尖らせると、腕を組んで俺から視線を外した。

「……もういい。灯台の写真撮る。」

そう言いながらも、明らかにムスッとしているのが分かる。
なんだこの可愛さは。


馬の背洞門、そして少し機嫌を直す

「ほら、次は 馬の背洞門 に行こうぜ。」

俺は気を取り直し、彼女を促す。
城ヶ島にあるこの巨大な自然の岩アーチは、長年の波風によって削られてできた壮大な景観だ。

岩場に立ち、俺たちは波の音を聞きながら、その巨大な岩を見上げる。

「すごいな……。」
「……うん。」

彼女はまだ若干拗ねていたが、景色の美しさに少し気を取られたのか、ふっと息を吐いた。

「ねえ。」
「ん?」
「……お兄さんが、私のこと見てくれないなら、海に飛び込んじゃおうかな。」

「いや、それはやめろ。」

「じゃあ……。」

俺が何か言う前に、彼女は俺の腕にそっと 自分の額を押し当てた

「……もうちょっとだけ、一緒にいよう。」

「……。」

拗ねていたはずなのに、どこか寂しそうな声。
DUCATIの彼女のことを考えていたのが、少し申し訳なくなる。

「当たり前だろ。まだツーリング終わってないんだから。」

俺がそう言うと、彼女は ようやく満足そうに微笑んだ


海鮮を堪能し、旅の締めくくり

「じゃあ、そろそろ飯にするか。」

最後に俺たちは、城ヶ島の食事処へ向かった。
新鮮なマグロ丼を頼み、ゆっくりと味わう。

「うまい。」
「……うん。」

彼女もまた、黙々とマグロを頬張る。

「さっきまでのテンションどこ行ったんだよ。」

「……おいしい。」

「そりゃ良かった。」

俺たちはそんなやりとりをしながら、城ヶ島の海を眺める。
やきもちを焼いたり、ツンとしたり、時折甘えたり——
彼女との旅は、思った以上に刺激的で、楽しかった。


旅はまだ終わらない

食事を終え、エンジンをかける。
城ヶ島大橋を再び渡り、次の目的地へ向かう時間だ。

「さて、このまま帰るか?」

「……。」

ヘルメット越しに、彼女が俺をじっと見ている。

「……また、どこか連れて行ってくれる?」

「当たり前だろ。」

「じゃあ、決まり。」

彼女は満足そうにゴールドウィングのエンジンをかける。
水平対向六気筒のエンジン音が、海風に溶け込んだ。

俺はスポーツグライドを発進させ、彼女と並んで走る。
城ヶ島の風が、次の旅の予感を運んでくるようだった——。

著者プロフィール

ようこそ、俺と相棒の奇妙な旅へ
エンジンをかければ、旅が始まる。
でも、俺の相棒はただのハーレーじゃない。
しゃべる。しかも、めちゃくちゃよくしゃべる。

「今日はどこへ行く?」
「その前に、俺のオイル交換はどうなった?」
「お前、また無計画に走ろうとしてるだろ?」

…うるさいけど、憎めない。
こいつと旅をしていると、ただの道も、ただの景色も、いつもとは違って見える。
自由気ままな俺と、口うるさいハーレーの奇妙な旅。
絶景、古き良き町並み、気まぐれな寄り道、そして時々起こるちょっと不思議な出来事。

📍 目的地はなし。行きたい場所に行くだけ。
🏍 二人(?)で風を切る。
🎭 笑えて、考えさせられる、そんな旅の記録。

「さあ、今日はどこへ行く?」
「お前がちゃんと計画を立ててるならな。」

さて、どうなることやら。

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