
「すべての出会いには意味がある。それを知る時、人は真の旅人となる。」
朝焼けが湖面を赤く染めるなか、相棒のハーレー・スポーツグライドのエンジンをかける。
今日は長野県の諏訪大社を目指す旅。
この神社は全国に広がる諏訪信仰の総本社であり、龍神と深い縁を持つ神秘の地だ。
SHOEIの黒と黄色のフルフェイスヘルメット をかぶり、ミラーシールド越しに広がる青空を見上げる。
「今日も何かが待っていそうだな……。」
ハーレーのエンジン音を響かせながら、諏訪の地へと向かった。

龍神の地へ! 諏訪大社 上社本宮

諏訪湖を望む山間部に佇む諏訪大社 上社本宮に到着。
境内は静謐な空気に包まれ、参道を歩くだけで心が引き締まる。
その時、不意に朱色の巫女装束を纏った女性が近づいてきた。
「龍から梅の木を授かっていませんか?」
その問いに、俺は一瞬、動きを止めた。
──それは、偕楽園での出来事だった。
春の陽射しが降り注ぐ庭園。
満開の梅の花の香りに包まれながら、一本の梅の木の下で出会った不思議な少年。
「これは、お兄さんへの贈り物。」
彼が手渡したのは、小さな梅の枝だった。
だが、俺がそれを受け取った瞬間、少年の身体は金色の光に包まれ、目の前で巨大な龍へと変わったのだ。
「お兄さんが進む道に、この梅の木は必要になるよ。」
そう言い残し、龍は天へと舞い上がっていった。
風が吹き、梅の花びらが舞い散るなか、俺はただその場に立ち尽くしていた。
──そして今、その梅の木の意味が明らかになろうとしている。
バッグの中から、その梅の枝を取り出し、巫女に見せた。
「この梅の木には、神の力が宿っています。」
巫女は微笑み、神前へと案内してくれた。
奉納の儀が終わると、一陣の風が吹き抜け、鳥居の向こうで何かが動いたような気がした。
「……これで、何かが変わるのか?」
「神々の導きが、お兄さんを次の旅へと誘うでしょう。」
巫女の言葉は、確かに聞こえた。
諏訪湖の静寂と旅の余韻

参拝を終えた俺は、ハーレーに跨りながら、湖畔へと向かう。
諏訪湖は四季折々の表情を見せる美しい湖で、湖畔にはのんびりと散策を楽しむ人々の姿があった。
「この景色……まるで時間が止まったみてぇだな。」
湖面には雲が映り、穏やかな風が吹き抜ける。
遠くにそびえる山々と、湖に映る空が一体となり、まるで別世界に迷い込んだかのようだった。
間欠泉と龍神の息吹

次に向かったのは、諏訪湖間欠泉センター。
ここでは地中深くから噴き上がる熱水が、勢いよく天空へと舞い上がる様子を間近で見ることができる。
「おい……これ、まるで龍が息を吹いてるみたいじゃねぇか?」
「確かに。ここには龍神の力が宿っているのかもな。」
大地の鼓動を感じるような轟音とともに、水柱が一気に天へと駆け上がる。
その光景を見つめながら、俺は龍神の言葉を思い出していた。
「空の玄関口に出会いが待つ」— 巫女の言葉

ふと、巫女の言葉が脳裏をよぎる。
「空の玄関口で、特別な出会いが待っています。」
「……空の玄関口?空港か・・・?」
何を意味するのかは、まだ分からない。
だが、旅の途中で出会うすべてに意味があるなら、この言葉もいずれ繋がるはずだ。
「また次の冒険へ」— 諏訪大社ツーリングを終えて
日が沈み、エンジンをかける。
静かだった諏訪の山々が、再びバイクの鼓動に包まれる。
「今日も最高の旅だったな。」
「おうよ! 走り続ける限り、俺たちの冒険は終わらねぇ!」
人生もバイク旅も、走り続けることが大事だ。
また次の冒険へ。エンジンを吹かし、俺たちは新たな道へと走り出した。