
「自然の中では、言葉はいらない。風と水がすべてを語ってくれる。」
— 不詳
「おい、今日はどこを走る?」
エンジンをかけた瞬間、相棒のハーレーが低く唸る。
「神奈川県の丹沢湖(たんざわこ)だ。」
「湖か…最近は海や山ばっかりだったし、ちょっと違う雰囲気を味わうのも悪くねぇな。」
「静かな湖の周りを流して、のんびり過ごすのもいいだろ?」
「フッ…お前にしては珍しいな。”伝説巡り”とか言わねぇのか?」
「今日はただのツーリングさ。」
相棒は軽くエンジンを吹かし、俺たちは丹沢湖へと向かう。
湖へ続く道、都会からの解放

東京を抜け、東名高速を西へ。
大井松田ICで降り、そこから一般道を走る。
「おい、だんだん山が深くなってきたぞ。」
「だろ?ここから丹沢湖までは、自然の中を駆け抜けるルートだ。」
左右に木々が生い茂るワインディングロード。
エンジン音が森に反響し、都会の喧騒から解放される。
「この道、悪くねぇな…風が気持ちいい。」
「もうすぐ湖が見えるぞ。」
山を抜け、視界が開けた瞬間――
目の前に青く輝く丹沢湖が広がった。
丹沢湖、静寂の世界

バイクを停め、湖畔へと歩みを進める。
水面は穏やかに揺れ、周囲の山々が静かに佇んでいる。
「おい…なんだ、この静けさは?」
「ここは観光地としてはそこまで有名じゃないからな。
手つかずの自然が、そのまま残ってる。」
風が吹き、湖面がさざ波を立てる。
その音だけが、周囲に響く。
「……何もない、ただの湖。でも、それがいいんだよな。」
「フッ、わかってきたじゃねぇか。」
湖を眺めながら、相棒としばらく無言で過ごす。
言葉はいらない。ただ、湖と風の音だけがそこにあった。
帰路、そして次のツーリングへ

「さて、そろそろ行くか?」
「おう。でも、今日はなんかスッキリしたな。」
「だろ?たまには、こういう静かなツーリングもいいもんだ。」
エンジンをかけ、俺たちは再び走り出す。
湖畔の道を抜け、森の中へ。
木々の間をすり抜ける風が、俺たちを送り出してくれるようだった。
「風が吹く限り、俺たちの旅は終わらない。」