スポンサーリンク

長瀞ツーリング 〜人もまた、自然の一部〜

第二章 バイクと哲学

「人間もまた、自然の一部である。」
— レオナルド・ダ・ヴィンチ

「ふーん、なるほどな。」

エンジンをかけながら、相棒のハーレーがぼそっと呟く。

「どうした?」
「いや、今のお前の言葉だよ。『人間もまた、自然の一部』 か。」
「レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉だ。人間は都会の中で生きてるけど、本来は自然の一部なんだよ。」
「…まぁ、確かに。俺たちがこうして山や川を求めて走るのも、自然に帰ろうとしてるってことかもな。」

相棒が珍しくしみじみとしたことを言う。
今日の目的地は、埼玉県の長瀞(ながとろ)
荒川が削り出した壮大な岩畳と、美しい川の流れが広がる自然の絶景だ。

だが、今日の旅にはもう一つ目的がある。

あの男を探すこと。

以前、秩父の長瀞で出会った白髪混じりの年配の男性
「昔、俺もしゃべるバイクに乗っていた」と言っていた、不思議なライダー。

あの時の言葉が、ずっと頭の片隅に残っている。
もし、もう一度会えるなら、今度こそちゃんと話を聞いてみたい。

「さて、行くか。」
「おう。自然の中に飛び込もうぜ。」

アクセルをひねり、俺たちは長瀞へ向けて走り出した。


自然へ続く道

東京を抜け、関越道へ。
都会の喧騒を背に、空気が次第に澄んでいくのを感じる。

「やっぱり、高速より一般道のほうがいいな。」
「まぁな。でも、さっさとワープして自然の中を走るのも悪くないだろ?」
「フッ…確かに、自然の中でこそ俺たちは本領発揮だからな。」

花園ICで高速を降り、国道140号線へ。
秩父方面へ向かうこの道は、適度なワインディングと自然の景色が広がり、走っていて気持ちがいい。

「おい、この道、けっこう好きかも。」
「秩父方面はどこを走っても気持ちいいぞ。」
「でもよ、今日はただのツーリングじゃねぇんだろ?」
「…ああ、あの男を探す。」

相棒のエンジン音が、少しだけ深く響いた気がした。


長瀞、記憶の場所へ

長瀞に到着し、荒川の岩畳へ向かう。
川の流れが作り出したこの奇跡の景観は、何度訪れても圧倒される。

「おい、この川、やっぱすげぇな。」
「何万年もかけて削られた岩だからな。まさに自然の力だ。」
「俺たちの旅も、これくらい長く続けばいいのにな。」
「……まぁな。」

バイクを降り、岩畳の上を歩く。
そして、目を凝らしながら、周囲を見渡す。

あの男が、またここに来ている気がする。

「いねぇな。」
「……いや、待て。」

ふと視線の先に、一台の古いバイクが停まっていた。


再会、そして語られる過去

「あんた…やっぱりここにいたんだな。」

白髪混じりの男は、俺を見てニヤリと笑った。

「よぉ、また来たのか。」

「…前に言ってた話、もう少し聞かせてもらえませんか?」

男は少しだけ驚いたような顔をした後、バイクのタンクをポンと叩いた。

「お前の相棒、まだしゃべってるか?」
「ええ、相変わらず。」
「フッ…いいな。」

「俺のも、昔はしゃべってたんだ。」

「……昔は?」

男は少し遠くを見ながら続ける。

「長い旅を続けてるうちに、いつの間にか聞こえなくなったんだよ。」
「それは…どういうことです?」

「バイクはな、ライダーの魂を映す鏡だ。」

「相棒がしゃべるってことは、お前の心がバイクに寄り添ってるってことさ。」

俺はじっと男の言葉を聞く。

「でもな…旅を終える時が来たら、バイクは静かになる。」

「……。」

「俺のバイクはもうしゃべらねぇ。でも、こいつと過ごした時間は、今でも心の中に残ってる。」

「……それって、寂しくないですか?」

男はしばらく沈黙し、そしてポツリと答えた。

「寂しいさ。でもな、それが自然の流れってもんだろ?」

まるで、川の流れのように。
水がいつか海へとたどり着くように。

ライダーとバイクの関係にも、終わりが来るのかもしれない。

でも、だからこそ、今を走る時間が尊いんだ。

「お前は、まだまだ走り続けろよ。」
「…ええ。もちろん。」

俺は静かに頷き、相棒の元へ戻る。


帰路と、これからの旅

「おい、どうだった?」
「…まだ、俺はこいつと走り続ける。」
「フッ…それでいいんだよ。」

エンジンをかけ、長瀞の景色を背にする。

「人間もまた、自然の一部。」

俺たちも、自然の流れの中で生きている。
ならば、この旅を続けることこそが、俺たちの生き方なんだ。

「行くぞ、相棒。」
「おう、どこまでもな!」

風が吹く限り、俺たちの旅は終わらない。

著者プロフィール

ようこそ、俺と相棒の奇妙な旅へ
エンジンをかければ、旅が始まる。
でも、俺の相棒はただのハーレーじゃない。
しゃべる。しかも、めちゃくちゃよくしゃべる。

「今日はどこへ行く?」
「その前に、俺のオイル交換はどうなった?」
「お前、また無計画に走ろうとしてるだろ?」

…うるさいけど、憎めない。
こいつと旅をしていると、ただの道も、ただの景色も、いつもとは違って見える。
自由気ままな俺と、口うるさいハーレーの奇妙な旅。
絶景、古き良き町並み、気まぐれな寄り道、そして時々起こるちょっと不思議な出来事。

📍 目的地はなし。行きたい場所に行くだけ。
🏍 二人(?)で風を切る。
🎭 笑えて、考えさせられる、そんな旅の記録。

「さあ、今日はどこへ行く?」
「お前がちゃんと計画を立ててるならな。」

さて、どうなることやら。

hiroyuki-developperをフォローする
スポンサーリンク
第二章 バイクと哲学
hiroyuki-developperをフォローする
タイトルとURLをコピーしました