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大洗磯前神社ツーリング 〜旅人の祈り、そして別れ〜

第二章 バイクと哲学

「別れの痛みは、出会いの喜びに比例する。」
— ジョージ・バーナード・ショー


「……フン、随分と切ない言葉を持ち出したな。」

エンジンをかけた瞬間、相棒のハーレーがぼそっと呟く。

「ジョージ・バーナード・ショーの言葉だ。別れの痛みは、出会いの価値を教えてくれるってことだな。」
「おい、今日はどこへ走る?」
茨城県・大洗磯前(いそざき)神社だ。」
「海沿いの神社か。で、何を祈る?」
「……彼女の旅の安全を。」

相棒はしばらく沈黙し、静かにエンジンを鳴らした。

「……そうか。」

俺はヘルメットを被り、アクセルをひねる。
潮の香りが混ざる風を感じながら、俺たちは最後の旅路へと走り出した。


海沿いの道、別れの前の時間

都内を抜け、常磐道を北上する。
次第に空が広がり、潮の香りが風に混じり始める。

「おい、見えてきたぞ。」

前方に、大洗の海が広がる。
その波打ち際に立つ、白い鳥居――

大洗磯前神社の『神磯の鳥居』。

「……なんて場所だよ、ここは。」
「海の中に立つ鳥居。ここは、波と神が出会う場所だ。」

バイクを停め、境内へと足を運ぶ。


最後の祈り

鳥居に向かい、静かに手を合わせる。
今日の願いはただ一つ。

「彼女が無事に世界を旅できますように。」

旅をする者にとって、道は果てしなく広がる。
しかし、それが同じ方向とは限らない。

「おい、そろそろ来るぞ。」

相棒が低く呟く。
俺が振り向くと、潮風に舞うロングヘア。

真っ赤なDUCATI。

「……来たわね。」

彼女はゆっくりと俺に近づき、ヘルメットを外した。


世界を走る彼女、止まる俺

「お前、本当に行くのか?」

俺の問いに、彼女は静かに頷いた。

「ええ。ロシアへ渡って、そのままヨーロッパへ抜ける。」

「……世界一周、か。」

「バイクと一緒にね。」

俺は彼女のDUCATIを見た。
ピカピカに磨かれたタンク。
しっかりと整備されたチェーン。

こいつも、彼女と一緒に世界を走る準備ができている。

「お前は?」

「……俺は、ここにいる。」

彼女は少し寂しそうに微笑んだ。

「やっぱり、日本を一周する旅を続けるのね。」

「ああ。俺の道は、ここにある。」


最後の別れ

「ねぇ、最後に…お願いがあるの。」

「なんだ?」

「……キス、してくれない?」

俺は少し驚いたが、彼女の瞳を見た瞬間、何も言えなくなった。

俺たちは言葉を交わすよりも、互いの距離を縮める。

そして、潮風の中で、静かに唇を重ねた。

それは、別れを知っているからこそ、深く、そして切ないキスだった。


エンジンの鼓動、そして違う道へ

「じゃあ、そろそろ行くわ。」

彼女はDUCATIに跨り、ヘルメットを被る。

「……気をつけろよ。」

「ええ。でも、もし世界のどこかであなたのハーレーを見かけたら――」

「その時は、また一緒に走るか。」

「約束よ。」

彼女はエンジンをかけ、俺を一瞬見つめた後、海沿いの道へと消えていった。

俺はしばらく、その背中を見送っていた。

「……おい、いいのか?」

相棒のハーレーが静かに問いかける。

「……ああ。」

「これが、永遠の別れになるかもしれねぇんだぞ?」

「分かってるさ。でも……」

俺は海の向こうを見つめた。

「どこかで、また出会う気がするんだ。」

相棒はエンジンを吹かした。

「……フッ、そうかよ。」

俺もヘルメットを被り、バイクに跨る。

別れは、痛い。
でも、それは出会えたからこそ感じる痛み。

彼女が世界を走るように、俺は俺の道を走る。

風が吹く限り、俺たちの旅は続く。

第二章 バイクと哲学 完

著者プロフィール

ようこそ、俺と相棒の奇妙な旅へ
エンジンをかければ、旅が始まる。
でも、俺の相棒はただのハーレーじゃない。
しゃべる。しかも、めちゃくちゃよくしゃべる。

「今日はどこへ行く?」
「その前に、俺のオイル交換はどうなった?」
「お前、また無計画に走ろうとしてるだろ?」

…うるさいけど、憎めない。
こいつと旅をしていると、ただの道も、ただの景色も、いつもとは違って見える。
自由気ままな俺と、口うるさいハーレーの奇妙な旅。
絶景、古き良き町並み、気まぐれな寄り道、そして時々起こるちょっと不思議な出来事。

📍 目的地はなし。行きたい場所に行くだけ。
🏍 二人(?)で風を切る。
🎭 笑えて、考えさせられる、そんな旅の記録。

「さあ、今日はどこへ行く?」
「お前がちゃんと計画を立ててるならな。」

さて、どうなることやら。

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第二章 バイクと哲学
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