「今日はどこ行く?」
朝、エンジンをかけると、相棒がいつものように話しかけてくる。
「夜景が見たくなった。みなとみらいへ行くぞ。」
「へぇ、都会の夜景とは珍しいじゃねぇか。」
「たまにはな。海と高層ビルの光、バイクで流しながら見るのも悪くないだろ?」
「ふん、まぁお前がそう言うなら付き合ってやるよ。」
相棒はいつも山やワインディングを好むが、たまには都会の道も走りたくなる。
今日は横浜・みなとみらいの夜景を求めて走ることにした。
湾岸道路を駆ける

夕方、都内を出発し、首都高速へ。
東京のビル群を抜けて湾岸線へ入ると、目の前には広い海が広がる。
「おい、海が見えてきたぞ。」
「だろ?都会の景色と海が混ざるこの感じ、いいよな。」
「まぁ…風は気持ちいいな。塩っけがあるのがちょっと気に入らねぇが。」
海風を感じながら、ベイブリッジへと差し掛かる。
対岸には横浜の街並みが広がり、少しずつライトが灯り始める。
「おい、あの観覧車、すげぇな。」
「コスモクロック21だ。横浜のシンボルみたいなもんだな。」
「都会の夜景ってのも、悪くねぇもんだな。」
いつもは山や湖ばかり走る俺たちだが、この夜景の美しさには相棒も少し感心しているようだった。
赤レンガ倉庫でひと休み

みなとみらいへ到着し、バイクを赤レンガ倉庫の近くへ停める。
ライトアップされたレンガ造りの建物が、どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出している。
「ここでちょっと休憩するか。」
「お前、俺を都会の真ん中に置いて、のんびりするつもりか?」
「お前も都会の空気、たまには吸っとけよ。」
近くのカフェでコーヒーを買い、夜の海を眺めながら一息つく。
目の前には、光の反射で輝く水面と、大さん橋に停泊する豪華客船。
「おい、俺たちもあの船みたいにどこか遠くまで行くか?」
「そうだな…そのうちフェリーに乗せて、北海道でも行くか?」
「おいおい、俺を寒い場所に連れて行く気か?」
「大丈夫だ、ちゃんと防寒装備を用意する。」
相棒はぶつぶつ言いながらも、どこか楽しそうだった。
やはり、走ることそのものがこいつの喜びなのだろう。
みなとみらいの夜景を流す

休憩を終え、再びバイクに跨る。
ここからはみなとみらいの街をゆっくり流す時間だ。
ランドマークタワーの高層ビル群、光る観覧車、並木道に揺れるオレンジ色の街灯。
都会の夜景の中を、低いエンジン音を響かせながら走るのは、いつもとは違う気分を味わえる。
「おい、この道、まるで映画のワンシーンみたいじゃねぇか。」
「まぁ、夜の都会をバイクで流すってのは、それだけで絵になるからな。」
「ふん、俺たちが主役ってわけか?」
「そういうことだ。」
横浜港のライトアップされた橋を渡りながら、相棒のハーレーと俺は静かに進む。
時速はゆっくり、だけど心の中はどこまでも満たされている。
次の目的地へ

夜の冷えた風が頬をかすめる。
みなとみらいの光が遠ざかるにつれ、旅の終わりが近づいてくる。
「なぁ、もう少し走らねぇか?」
「どこへ?」
「横須賀あたりまで流すのもアリだろ?」
「お前、都会の夜景に感化されてないか?」
「まぁ、たまにはな。」
そう言うと、相棒は軽くエンジンを吹かした。
「じゃあ、行くか。横須賀の夜を見に。」
「おう、風と一緒に駆け抜けるぜ。」
エンジンが唸り、俺たちは再び走り出す。
都会の光を背に、次なる目的地へ――
風が吹く限り、俺たちの旅は続く。