
人生とは、自転車のようなものだ。倒れないようにするには走り続けなければならない。
— アルベルト・アインシュタイン
風を感じながら、俺はふとこの言葉を思い出していた。
人生もバイクも、止まればバランスを崩し、倒れる。
前へ進み続けることでしか、俺たちは自分の道を切り開けない。
「おい、今日はどこを走る?」
エンジンをかけると、相棒のハーレーがいつものように話しかけてくる。
「千葉の香取神宮へ行く。」
「また渋いチョイスだな。なんでまた?」
「たまには神様に旅の安全を祈るのも悪くないだろ?」
「なるほどな。まぁ、お前の運転が危なっかしいし、神頼みも必要かもな?」
「余計なお世話だ。」
軽くアクセルをひねる。
今日も旅の始まりだ。
東京を抜け、千葉の道へ

都内を抜け、京葉道路から東関東自動車道へ。
千葉の空は澄み渡り、海風が心地よく感じられる。
「おい、今日はずいぶんスムーズだな。」
「千葉方面は道が広くて走りやすいからな。」
「でも、気を抜くなよ?こういう時に限って事故が起こるもんだ。」
「分かってるよ。」
バイクは走ることでバランスを取る。
そして、ライダーも走ることで生きている実感を得る。
適度なスピードで流しながら、佐原香取ICで高速を降りる。
ここからは一般道を走り、香取神宮へ向かう。
香取神宮の荘厳な空気

神宮の鳥居をくぐると、一気に空気が変わる。
古木が立ち並ぶ参道を歩きながら、ふと相棒に話しかける。
「お前も一緒に参拝するか?」
「俺はここで待ってるぜ。バイクは神様に挨拶できねぇからな。」
「まぁ、俺が代わりに祈っておくよ。」
手水で清め、本殿へ。
千年以上の歴史を持つ香取神宮は、武道の神様としても知られている。
「旅の無事と、これからの道が良いものになりますように。」
手を合わせ、深く息を吐く。
こうして立ち止まる時間も、走り続けるためには必要なのかもしれない。
佐原の町並みを散策

参拝を終え、相棒の元へ戻る。
「どうだった?」
「いい場所だったよ。気持ちが整った気がする。」
「じゃあ、このまま帰るのか?」
「いや、せっかくだし、佐原の町並みでも見ていこう。」
香取神宮の近くには、小江戸と呼ばれる佐原の古い町並みが広がっている。
バイクをゆっくり流しながら、江戸時代から続く建物を眺める。
「この町、なんか落ち着くな。」
「風情があるだろ?」
「でもよ、そろそろ俺も走りたくなってきたぜ。」
相棒のハーレーは、じっとしているのが苦手らしい。
まぁ、それは俺も同じだ。
帰路と、走り続ける意味

日が傾き始め、俺たちは再びエンジンをかける。
来た道を戻るのではなく、違うルートを選びながら、気ままに走る。
「なぁ、お前、最初に言ってたアインシュタインの言葉、あれ本当だよな?」
「何が?」
「人生ってのは、バイクみたいなもんだ。走り続けなきゃバランスを崩すってやつ。」
「…そうだな。だから俺たちは、走り続けるんだ。」
相棒はエンジンを吹かす。
俺はアクセルをひねる。
風が吹く限り、俺たちの旅は終わらない。